鳥  批評と創造の試み

主として現代日本の文学と思想について呟きます。

半年振りの復活なのか?

🐤鳥の事務所PASSAGE店通信🐤

◎総特集=批評を遠く離れて――小林秀雄歿後40年

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◎総特集=批評を遠く離れて――小林秀雄歿後40年

半年振りの復活なのか?

 

皆さん、今日は。鳥の事務所です。お久しぶりです。半年振りです。いやー、あれから、いろいろあって、今もありつつあるのですが、とりあえず、復活しておきます。

さて、新しい特集は、小林秀雄です。

今を去ること40年前、1983年3月1日に小林秀雄はこの世を去りました。少なくとも日本の思想界、批評界にはいまだに大きな影響を与え続けています。果たして、小林が問いかけた問題とは何だったのか、そもそも、われわれはどこまで、その小林の問いかけに応え得ているのか、考えねばならない問題は山積しているといってよいでしょう。

そこで当棚としては「◎総特集=批評を遠く離れて――小林秀雄歿後40年」をテーマに掲げ、小林の作品、小林に関わる評論や入門書などを集め、お手に取っていただければ、と考えます。

という訳で、今回、第一次出庫目録は以下の通りです。

 

①  小林秀雄本居宣長

②  小林秀雄本居宣長補記』

③  小林秀雄岡潔『人間の建設』

④  『現代思想 特集=小林秀雄

⑤  小林秀雄宣長・言葉・白鳥』

⑥  三浦雅士『青春の終焉』

⑦  ランボオ小林秀雄訳『地獄の季節』

⑧  大岡昇平編『中原中也詩集』

⑨  小林秀雄『考えるヒント』1

⑩  小林秀雄『考えるヒント』3

⑪  小林秀雄『近代絵画』

⑫  『本居宣長』上下・文庫

⑬  『小林秀雄初期文芸論集』

⑭  『栗の樹』

⑮  『新潮日本文学アルバム 小林秀雄

 

 以上15冊となります。店頭に出るのは来週以降となります。

 

① 小林秀雄本居宣長』1977年・新潮社。小林秀雄の代表作。本居宣長を主軸に据え、日本近世の思想史を小林の視点で総ざらいをするとともに、冒頭の折口信夫の言葉「宣長は源氏だ」に示されるように、宣長の根本的なテーマを表す『源氏物語』についても展開する。小林の方法は決して学問的ではない。かと言って批評的でもない。ただ、宣長や先人たちの文を味わう、眺める、という方法でもない方法である。味読されよ。経年劣化。1,310円

 

② 小林秀雄本居宣長補記』1982年・新潮社。『本居宣長』本編刊行後、何回かなされた講演を元にしている。小林の講演の文字起こしものは名編揃いで有名だが、これはその中でも屈指のもの。大変分かり易く、滋味深く、読者をして思考に誘う。『本居宣長』本編未読の方は是非、この『補記』からお読み頂きたい。経年劣化、書き込み有、310円

 

③ 小林秀雄岡潔『人間の建設』1965年・新潮社/2010年・新潮文庫。日本を代表する数学者・岡潔との対話録。小林が如何に、数学や物理学などの理系の学問に精通していたかを示す好例の対話。無論、岡も数多の随想集を刊行するほどの文系的感性を兼ね備えていたのだが。200円

 

 

④ 『現代思想 特集=小林秀雄』1979年3月号。小林秀雄を主題とする雑誌の特集は数多存在するのだが、これは、その中でも白眉のものの一つ。柄谷行人の著名な「交通について」に始まり、佐藤信夫樺山紘一長谷川宏足立和浩、新谷敬三郎、多木浩二、久米博、脇坂充、宇波彰と言った、『現代思想』誌ならではの錚々たる論客が寄稿する。経年劣化。810円

 

⑤ 小林秀雄宣長・言葉・白鳥』1983年・文藝春秋。小林、絶筆となった「正宗白鳥の作について」、『本居宣長』の初期形となった「「物のあはれ」の説について」などの諸作品を収める。最初期の小篇と最晩年のものが併存して興味深い。885円

 

⑥ 三浦雅士『青春の終焉』2001年・講談社三浦雅士の文名を高らしめた力作。「青春」という、或る種の病理現象を、体系的にではなく、言ってみれば文芸批評の方法で読み解いていく。三島や太宰、馬琴までも俎上に上げられるが、なんと言っても小林秀雄その人が主役と言ってもよい。まさに小林は「青春」の批評家だったのである。カヴァー少々汚れ有、1220円

 

⑦ ランボオ小林秀雄訳『地獄の季節』1930年/1938年・岩波文庫。小林は最初シャルル・ボードレールの『エドガー・ポー』の翻訳から出発した。小林の翻訳はいくつか残っているが、その中でも最も有名なのが、アルチュール・ランボーの『地獄の季節』である。後に数多の誤訳を指摘されることになるが、小林が元々持っていた詩人の感性による力技による翻訳が今でも心に残る。カヴァー・グラシン紙無し、480円

 

⑧ 大岡昇平編『中原中也詩集』1981年・岩波文庫。一人の女性を巡って小林と中原が三角関係の泥沼に陥ったのは有名な話ではあるが、彼らの事跡をいくつか読むと、この両者が如何に感性が類似していたかが分かる。三浦雅士の指摘によれば、それは「凝視と放心」に他ならない(「孤独の発明」)。小林を理解することは中原を理解することで、またその逆も真なり、なのである。110円

 

⑨ 小林秀雄『考えるヒント』1974年・文春文庫。小林中期の、いい意味で文章の緊張感の抜けた随筆が並ぶ。卑近な話題から、単なる読後感まで、自在に往還して自身の世界観を語る。随筆文学として、画期をなした作品と言えよう。200円

 

⑩ 小林秀雄『考えるヒント』3・1976年・文春文庫。元々の「考へるヒント」シリーズのものではなく、講演の速記録を集めたもの。名品「信ずること知ること」や「私の人生観」などで知られるように、小林の講演の記録は、彼の本来の批評の文とは一線を画し、独特な文体と射程を持つ。小林自身はこれらを余技だとしたかも知れぬが、無論そんなはずはない。われわれはここに、江戸落語に連なる口承文学の伝統すら検討せねばならない。200円

 

あと、残り5冊の解説は後程。

 

おっと、それから、前特集「『ユリシーズ』100年!」の彼らも出庫いたします。

 

ジェイムズ・ジョイスユリシーズ』全4巻(セット)・丸谷・永川・高松訳・集英文庫ヘリテージシリーズ

ジョイス第二長篇小説にして、20世紀を代表する長篇小説。アイルランドの古都ダブリンを舞台に1904年6月16日、たった一日の出来事を中年の広告取りブルーム、その妻モリー、そしてジョイス自身を思わせる文学徒スティーヴンを通して描く。定評ある丸谷・永川・高松訳で。詳細な注解付き。全4巻セット。

 

というわけで、そろそろ2022年、『ユリシーズ』100年祭りも終わりましたが、まだこの子たちが皆さんを待っています。

 

ジェイムズ・ジョイス『さまよえる人たち』近藤耕人訳・彩流社

¥1,360税込・送料別

商品の状態

 

商品の説明

姦通と嫉妬、 同性愛、 サド= マゾの四角関係、愛と自由の背反などのテーマを、アイルランドとイギリスの確執や第一次大戦前夜のヨーロッパの時代状況を背景に描かれたジョイス唯一の戯曲にして、イプセン劇につづくケルトの近代劇と言われるものです。表紙凹みあり。中身綺麗。

 

ジェイムズ・ジョイス室内楽――ジョイス抒情詩集』出口泰生訳・白鳳社

¥3,000税込・送料別

商品の状態

商品の説明

ジョイス二冊の詩集『室内楽』、『ポームズ・ペニーチ』を合本、全詩を収録。原詩と訳詩を二分冊にて収録。一読すると、これがあの『ユリシーズ』の作者の手になる詩なのかと驚くであろう。平易にして過度にロマンティック。しかし、そこに20世紀を代表する小説家の秘密があるのかも知れない。経年劣化。中身は綺麗。

 

是非よろしくお願いします。

 

PASSAGE by ALL REVIEWS

https://passage.allreviews.jp/

東京都千代田区神田神保町1-15-3

サンサイド神保町ビル1F

 

今しばらくの特集は

「批評を遠く離れて――小林秀雄歿後40年」ということで、小林関係の本になります。詳細は以下をごらん下さい。

鳥の事務所 | PASSAGE by ALL REVIEWS

 

皆さま、どうか宜しくお願いいたします。

 

ところで、この企画(小林特集)を立てて、原稿を書いて、準備を整えたのが、恐らく3月も終わりごろのことです。4月の頭には商品も揃えて、発送の準備をする直前まで行っていました。それが、何故、一ヶ月も遅れてしまったのか? 体調の不調(花粉症だが、風邪をひいたような感じになる)や、仕事の不調(売上大幅ダウン、回復の見込み立たず)、家の雑事(急遽、引越した。新居そのものは今は安定して、快適です。分不相応な書斎や書庫まであります。床が抜けるのが心配ですが)などもあるが、最も大きな理由は対象への興味があり過ぎて収拾が付かなくなっているのと、今一つ、これでいい、というレヴェルでの文章が書けないということによる。困った。これについては、『鳥』第15号の「ことの次第」で書いた。まー、きっと、贅沢な悩みなんでしょうね。

今現在、お藏に入っている主要なものは、以下の通り。

① 柄谷行人『力と交換様式』批判「「D」が「霊」に乗っ取られる」

② 村上春樹『街とその不確かな壁』書評「文学的正解を空無化する」

ジェイムズ・ジョイスユリシーズ』感想「これは文学ではない。」

これらが今眠っていますが、そのままお眠り頂くことになるかも知れません(´;ω;`)ウッ…。

 

で、今は、ジョイスの『ダブリナーズ』と『若い男としての芸術家の肖像画』を読み、『フィネガン』を読み始めようとしたときに、丸谷才一の『ロンドンで本を読む』を読み始めて面白い、と思ったので、同じ丸谷の『文学のレッスン』を読んでいます。こんなことをしていると、ほんとに何も進まないな。

ま、いっか。なるようになる。ケ・セラセラ、なるようになる。

と、いうことで。

🐥

20230511 1112

 

 

 

 

🐤鳥の事務所PASSAGE店通信🐤

◎総特集=批評を遠く離れて――小林秀雄歿後40年

半年振りの復活なのか? その②

 

皆さん、今日は。鳥の事務所です。先程の「半年振りの復活なのか?」の続きです。今特集の第一次出庫目録解説の続きです。

 

⑪ 小林秀雄『近代絵画』1958年・人文書院・新潮社1968年・新潮文庫。残念ながらここに提供するのは、文庫版で、図版も白黒で、印刷も不鮮明である。今やインターネットで、美術作品も含めて、ありとあらゆる情報を手に入れることができる時代となった。ぜひ、該当する図版をネットでじっくり見て欲しい。そのうえで、自らの感想を持ちつつ、小林の視点の自在さを堪能して頂きたい。経年劣化、100円

 

 

⑫ 小林秀雄本居宣長上下・1992年・新潮文庫。『本居宣長』本編に加えて、『本居宣長補記』、及び本編刊行後になされた江藤淳との対談「『本居宣長』をめぐって」を収録。名実ともに小林秀雄の代表作と言える。本居宣長を主軸に据え、日本近世の思想史を小林の視点で総ざらいをする。『本居宣長』は、あるいは『本居宣長補記』があってこその作品とも言える。ぜひ、本編・補記の一体の形でお読みいただきたい。

 

⑬ 小林秀雄小林秀雄初期文芸論集』1980年・岩波文庫。デビュー作「様々なる意匠」から出世作私小説論」に至る、小林の批評家としての仕事の頂点はここに尽きる。あるいは極端に言えば、文芸批評家としての小林秀雄は「様々なる意匠」で尽きていると言っても過言ではない。やがて小林自身は自己壊滅的に批評から離脱していくのである。カヴァー・グラシン紙無し、970円

 

⑭ 小林秀雄『栗の樹』1974年・毎日新聞社/1990年・講談社文芸文庫。小林は或るところから批評を捨てて「感想」とでもいうべきジャンルに横滑り的に移行していったのだと思う。その中心部分を占めていたのが、本書に収められた幾つかの随筆や講演の速記録だと考えられる。その意味では、小林の最も実り多い仕事こそ、中期になされた、これらの「感想」であったのだ。経年劣化、600円

 

⑮ 『新潮日本文学アルバム 小林秀雄1986年・新潮社。三浦雅士によれば19世紀から20世紀にかけて「青春」という病が蔓延した。おそらくその病に罹患した多くの患者たちは、自らをあたかも劇中の主人公として生きたのである。この写真集の中の批評家の姿はあたかも、人生そのものを演じているかのようである。まさに、小林秀雄こそ、「青春の批評家」だったのだ(三浦『青春の終焉』)。今や青春は終焉の時を迎え、それはほとんど死語になり得た。もし、小林に強い異和を感じるのであれば、そこにこそ起因するのではなかろうか。730円

 

以上、宜しくお願いします。

 

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東京都千代田区神田神保町1-15-3

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今しばらくの特集は

「批評を遠く離れて――小林秀雄歿後40年」ということで、小林関係の本になります。詳細は以下をごらん下さい。

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皆さま、どうか宜しくお願いいたします。

 

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皆さん、今日は。鳥の事務所です。お久しぶりです。半年振りです。いやー、あれから、いろいろあって、今もありつつあるのですが、とりあえず、復活しておきます。

さて、新しい特集は、小林秀雄です。

今を去ること40年前、1983年3月1日に小林秀雄はこの世を去りました。少なくとも日本の思想界、批評界にはいまだに大きな影響を与え続けています。果たして、小林が問いかけた問題とは何だったのか、そもそも、われわれはどこまで、その小林の問いかけに応え得ているのか、考えねばならない問題は山積しているといってよいでしょう。

そこで当棚としては「◎総特集=批評を遠く離れて――小林秀雄歿後40年」をテーマに掲げ、小林の作品、小林に関わる評論や入門書などを集め、お手に取っていただければ、と考えます。

という訳で、今回、第一次出庫目録は以下の通りです。

 

①  小林秀雄本居宣長

②  小林秀雄本居宣長補記』

③  小林秀雄岡潔『人間の建設』

④  『現代思想 特集=小林秀雄

⑤  小林秀雄宣長・言葉・白鳥』

⑥  三浦雅士『青春の終焉』

⑦  ランボオ小林秀雄訳『地獄の季節』

⑧  大岡昇平編『中原中也詩集』

⑨  小林秀雄『考えるヒント』1

⑩  小林秀雄『考えるヒント』3

⑪  小林秀雄『近代絵画』

⑫  『本居宣長』上下・文庫

⑬  『小林秀雄初期文芸論集』

⑭  『栗の樹』

⑮  『新潮日本文学アルバム 小林秀雄

 

 以上15冊となります。店頭に出るのは来週以降となります。

 

① 小林秀雄本居宣長』1977年・新潮社。小林秀雄の代表作。本居宣長を主軸に据え、日本近世の思想史を小林の視点で総ざらいをするとともに、冒頭の折口信夫の言葉「宣長は源氏だ」に示されるように、宣長の根本的なテーマを表す『源氏物語』についても展開する。小林の方法は決して学問的ではない。かと言って批評的でもない。ただ、宣長や先人たちの文を味わう、眺める、という方法でもない方法である。味読されよ。経年劣化。1,310円

 

② 小林秀雄本居宣長補記』1982年・新潮社。『本居宣長』本編刊行後、何回かなされた講演を元にしている。小林の講演の文字起こしものは名編揃いで有名だが、これはその中でも屈指のもの。大変分かり易く、滋味深く、読者をして思考に誘う。『本居宣長』本編未読の方は是非、この『補記』からお読み頂きたい。経年劣化、書き込み有、310円

 

③ 小林秀雄岡潔『人間の建設』1965年・新潮社/2010年・新潮文庫。日本を代表する数学者・岡潔との対話録。小林が如何に、数学や物理学などの理系の学問に精通していたかを示す好例の対話。無論、岡も数多の随想集を刊行するほどの文系的感性を兼ね備えていたのだが。200円

 

 

④ 『現代思想 特集=小林秀雄』1979年3月号。小林秀雄を主題とする雑誌の特集は数多存在するのだが、これは、その中でも白眉のものの一つ。柄谷行人の著名な「交通について」に始まり、佐藤信夫樺山紘一長谷川宏足立和浩、新谷敬三郎、多木浩二、久米博、脇坂充、宇波彰と言った、『現代思想』誌ならではの錚々たる論客が寄稿する。経年劣化。810円

 

⑤ 小林秀雄宣長・言葉・白鳥』1983年・文藝春秋。小林、絶筆となった「正宗白鳥の作について」、『本居宣長』の初期形となった「「物のあはれ」の説について」などの諸作品を収める。最初期の小篇と最晩年のものが併存して興味深い。885円

 

⑥ 三浦雅士『青春の終焉』2001年・講談社三浦雅士の文名を高らしめた力作。「青春」という、或る種の病理現象を、体系的にではなく、言ってみれば文芸批評の方法で読み解いていく。三島や太宰、馬琴までも俎上に上げられるが、なんと言っても小林秀雄その人が主役と言ってもよい。まさに小林は「青春」の批評家だったのである。カヴァー少々汚れ有、1220円

 

⑦ ランボオ小林秀雄訳『地獄の季節』1930年/1938年・岩波文庫。小林は最初シャルル・ボードレールの『エドガー・ポー』の翻訳から出発した。小林の翻訳はいくつか残っているが、その中でも最も有名なのが、アルチュール・ランボーの『地獄の季節』である。後に数多の誤訳を指摘されることになるが、小林が元々持っていた詩人の感性による力技による翻訳が今でも心に残る。カヴァー・グラシン紙無し、480円

 

⑧ 大岡昇平編『中原中也詩集』1981年・岩波文庫。一人の女性を巡って小林と中原が三角関係の泥沼に陥ったのは有名な話ではあるが、彼らの事跡をいくつか読むと、この両者が如何に感性が類似していたかが分かる。三浦雅士の指摘によれば、それは「凝視と放心」に他ならない(「孤独の発明」)。小林を理解することは中原を理解することで、またその逆も真なり、なのである。110円

 

⑨ 小林秀雄『考えるヒント』1974年・文春文庫。小林中期の、いい意味で文章の緊張感の抜けた随筆が並ぶ。卑近な話題から、単なる読後感まで、自在に往還して自身の世界観を語る。随筆文学として、画期をなした作品と言えよう。200円

 

⑩ 小林秀雄『考えるヒント』3・1976年・文春文庫。元々の「考へるヒント」シリーズのものではなく、講演の速記録を集めたもの。名品「信ずること知ること」や「私の人生観」などで知られるように、小林の講演の記録は、彼の本来の批評の文とは一線を画し、独特な文体と射程を持つ。小林自身はこれらを余技だとしたかも知れぬが、無論そんなはずはない。われわれはここに、江戸落語に連なる口承文学の伝統すら検討せねばならない。200円

 

あと、残り5冊の解説は後程。

 

おっと、それから、前特集「『ユリシーズ』100年!」の彼らも出庫いたします。

 

ジェイムズ・ジョイスユリシーズ』全4巻(セット)・丸谷・永川・高松訳・集英文庫ヘリテージシリーズ

ジョイス第二長篇小説にして、20世紀を代表する長篇小説。アイルランドの古都ダブリンを舞台に1904年6月16日、たった一日の出来事を中年の広告取りブルーム、その妻モリー、そしてジョイス自身を思わせる文学徒スティーヴンを通して描く。定評ある丸谷・永川・高松訳で。詳細な注解付き。全4巻セット。

 

というわけで、そろそろ2022年、『ユリシーズ』100年祭りも終わりましたが、まだこの子たちが皆さんを待っています。

 

ジェイムズ・ジョイス『さまよえる人たち』近藤耕人訳・彩流社

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姦通と嫉妬、 同性愛、 サド= マゾの四角関係、愛と自由の背反などのテーマを、アイルランドとイギリスの確執や第一次大戦前夜のヨーロッパの時代状況を背景に描かれたジョイス唯一の戯曲にして、イプセン劇につづくケルトの近代劇と言われるものです。表紙凹みあり。中身綺麗。

 

ジェイムズ・ジョイス室内楽――ジョイス抒情詩集』出口泰生訳・白鳳社

¥3,000税込・送料別

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ジョイス二冊の詩集『室内楽』、『ポームズ・ペニーチ』を合本、全詩を収録。原詩と訳詩を二分冊にて収録。一読すると、これがあの『ユリシーズ』の作者の手になる詩なのかと驚くであろう。平易にして過度にロマンティック。しかし、そこに20世紀を代表する小説家の秘密があるのかも知れない。経年劣化。中身は綺麗。

 

是非よろしくお願いします。

 

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今しばらくの特集は

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皆さま、どうか宜しくお願いいたします。

 

ところで、この企画(小林特集)を立てて、原稿を書いて、準備を整えたのが、恐らく3月も終わりごろのことです。4月の頭には商品も揃えて、発送の準備をする直前まで行っていました。それが、何故、一ヶ月も遅れてしまったのか? 体調の不調(花粉症だが、風邪をひいたような感じになる)や、仕事の不調(売上大幅ダウン、回復の見込み立たず)、家の雑事(急遽、引越した。新居そのものは今は安定して、快適です。分不相応な書斎や書庫まであります。床が抜けるのが心配ですが)などもあるが、最も大きな理由は対象への興味があり過ぎて収拾が付かなくなっているのと、今一つ、これでいい、というレヴェルでの文章が書けないということによる。困った。これについては、『鳥』第15号の「ことの次第」で書いた。まー、きっと、贅沢な悩みなんでしょうね。

今現在、お藏に入っている主要なものは、以下の通り。

① 柄谷行人『力と交換様式』批判「「D」が「霊」に乗っ取られる」

② 村上春樹『街とその不確かな壁』書評「文学的正解を空無化する」

ジェイムズ・ジョイスユリシーズ』感想「これは文学ではない。」

これらが今眠っていますが、そのままお眠り頂くことになるかも知れません(´;ω;`)ウッ…。

 

で、今は、ジョイスの『ダブリナーズ』と『若い男としての芸術家の肖像画』を読み、『フィネガン』を読み始めようとしたときに、丸谷才一の『ロンドンで本を読む』を読み始めて面白い、と思ったので、同じ丸谷の『文学のレッスン』を読んでいます。こんなことをしていると、ほんとに何も進まないな。

ま、いっか。なるようになる。ケ・セラセラ、なるようになる。

と、いうことで。

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◎総特集=批評を遠く離れて――小林秀雄歿後40年

半年振りの復活なのか? その②

 

皆さん、今日は。鳥の事務所です。先程の「半年振りの復活なのか?」の続きです。今特集の第一次出庫目録解説の続きです。

 

⑪ 小林秀雄『近代絵画』1958年・人文書院・新潮社1968年・新潮文庫。残念ながらここに提供するのは、文庫版で、図版も白黒で、印刷も不鮮明である。今やインターネットで、美術作品も含めて、ありとあらゆる情報を手に入れることができる時代となった。ぜひ、該当する図版をネットでじっくり見て欲しい。そのうえで、自らの感想を持ちつつ、小林の視点の自在さを堪能して頂きたい。経年劣化、100円

 

 

⑫ 小林秀雄本居宣長上下・1992年・新潮文庫。『本居宣長』本編に加えて、『本居宣長補記』、及び本編刊行後になされた江藤淳との対談「『本居宣長』をめぐって」を収録。名実ともに小林秀雄の代表作と言える。本居宣長を主軸に据え、日本近世の思想史を小林の視点で総ざらいをする。『本居宣長』は、あるいは『本居宣長補記』があってこその作品とも言える。ぜひ、本編・補記の一体の形でお読みいただきたい。

 

⑬ 小林秀雄小林秀雄初期文芸論集』1980年・岩波文庫。デビュー作「様々なる意匠」から出世作私小説論」に至る、小林の批評家としての仕事の頂点はここに尽きる。あるいは極端に言えば、文芸批評家としての小林秀雄は「様々なる意匠」で尽きていると言っても過言ではない。やがて小林自身は自己壊滅的に批評から離脱していくのである。カヴァー・グラシン紙無し、970円

 

⑭ 小林秀雄『栗の樹』1974年・毎日新聞社/1990年・講談社文芸文庫。小林は或るところから批評を捨てて「感想」とでもいうべきジャンルに横滑り的に移行していったのだと思う。その中心部分を占めていたのが、本書に収められた幾つかの随筆や講演の速記録だと考えられる。その意味では、小林の最も実り多い仕事こそ、中期になされた、これらの「感想」であったのだ。経年劣化、600円

 

⑮ 『新潮日本文学アルバム 小林秀雄1986年・新潮社。三浦雅士によれば19世紀から20世紀にかけて「青春」という病が蔓延した。おそらくその病に罹患した多くの患者たちは、自らをあたかも劇中の主人公として生きたのである。この写真集の中の批評家の姿はあたかも、人生そのものを演じているかのようである。まさに、小林秀雄こそ、「青春の批評家」だったのだ(三浦『青春の終焉』)。今や青春は終焉の時を迎え、それはほとんど死語になり得た。もし、小林に強い異和を感じるのであれば、そこにこそ起因するのではなかろうか。730円

 

以上、宜しくお願いします。

 

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今しばらくの特集は

「批評を遠く離れて――小林秀雄歿後40年」ということで、小林関係の本になります。詳細は以下をごらん下さい。

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皆さま、どうか宜しくお願いいたします。

 

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