鳥  批評と創造の試み

主として現代日本の文学と思想について呟きます。

途轍もなく面白い! ジョン・グリシャム『「グレート・ギャツビー」を追え』    

🐏村上春樹を読む🐏 

  

途轍もなく面白い!

ジョン・グリシャム『「グレート・ギャツビー」を追え』 

  

  

■John Grisham,CAMINO ISLAND,2017./ジョン・グリシャム『「グレート・ギャツビー」を追え』2017年/村上春樹訳・2020年10月10日・中央公論新社。 

■翻訳・長篇小説(ミステリー)。 

■全8章・エピローグ・著者覚え書き・訳者あとがき。

■413ページ。

■1,800円(税抜き)。

■2023年5月1日読了。 

■採点 ★★★☆☆。

  

 基本的にも、応用的にも、まずミステリーの類いは小説としては読まない(映画やドラマであれば可)。ま、いわゆる食わず嫌い、ということも無論あるだろうが、仮に読み始めても、弛緩した文体(失礼…)に辟易としてしまい、3ページぐらいで挫折してしまうのが関の山なのだ。要は文章でOUTになるのだ。

 ま、しかし、村上春樹の推薦、あるいは本書のような、村上自身の翻訳であれば読まずばなるまい。

 しかし、先に述べたようなことは、少なくとも本書について言えば全くの杞憂に終わった。途轍もなく面白い。文章もこなれている(原文がそうなのかは不明だが)、情景描写や心理描写も適切、当然ストーリー上の展開も申し分ない。

強いて言えば、主要なる登場人物が多過ぎる、という点が気になったが、それもこの種のミステリーでは普通のことなのかも知れないが。

途中で売れない作家のマーサ―や、書店主のケーブルの家族の暗部が、アメリカ社会の暗部を照射している気もしたが、そういうのは、ケーブルが複数の女性を弄ぶような一種のリップ・サーヴィスなのかと思うといささか暗然とする。しかし、最後に彼がわざわざマーサ―に会いに来たことで、聊かならず救われるところがあった。それにしても、マーサーは何故、〇〇のことを××に△△したのであろうか? そうしないと物語が展開しなかったのか?

あとは、もう少し『ギャツビー』について触れられてもいいようにも思った。

強奪団のリーダーが最後呆気なく〇〇されてしまうのも気になった。

とても、気持ちのいい登場人物たちで、次回作がとても気になった。次回作『狙われた楽園』は書店主ブルース・ケーブルが主人公で、売れない作家マーサー・マンはチョイ役のようだが、むしろ、個人的にはマーサーを主役とした、文芸ミステリーを読みたいものだ。

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