鳥  批評と創造の試み

主として現代日本の文学と思想について呟きます。

第一次出庫書目のご案内

🐤鳥の事務所PASSAGE店通信🐤

 

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第一次出庫書目のご案内

ジェイムズ・ジョイスユリシーズ』100年!」

それでは第一次出庫書目をご案内いたします。価格は税込みです。

① ジェイムズ・ジョイス『ダブリンの市民』高松雄一訳・福武文庫。

ジョイス唯一の短篇連作集。畢生の大作『ユリシーズ』の鼎訳(丸谷・永松・高松)で知られる高松雄一の名訳。『ユリシーズ』や『フィネガンズ・ウェイク』で「挫折」した方は、比較的通常のモダンニズムの小説の枠で書かれた本書から。今は亡き「福武文庫」の、菊地信義の手になる瀟洒なブック・デザインが目を引く。この後、改訳されて集英社から刊行されているが、そちらはとにかく重い! 是非、往年の名ブランド、名訳で。300円。

 

② ジョイス『ダブリンの市民』結城英雄訳・岩波文庫

ジョイス唯一の短篇連作集。集英社版『ユリシーズ』の鼎訳(丸谷・永松・高松)の解説者にして、サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞作『「ユリシーズ」の謎を歩く』(1999年・集英社)で名高いジョイス学者による希少の翻訳。各章扉に付されたダブリンの写真が楽しい。420円。

 

③ ジェイムズ・ジョイス『若い藝術家の肖像』丸谷才一訳・集英社文庫ヘリテージシリーズ。ジェイムズ・ジョイス第一長篇小説。大作『ユリシーズ』の主人公の一人スティーヴン・ディーダラスを主人公に据えて、ジョイス自身の若き日も目に浮かぶ半自伝的小説。小説家にして、『ユリシーズ』鼎訳者の一人である丸谷才一の新訳、決定版。詳細な註解を附載。結城英雄解説。これによって讀賣文学賞(研究・翻訳部門)を受賞。ほぼ新品。

 

④ 柳瀬尚紀ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』岩波新書。かの難作『フィネガンズ・ウェイク』を完訳し、『ユリシーズ』を途中まで訳す途上で鬼籍に入った天才翻訳家の『ユリシーズ』読解のjoy(喜び)の書。取り分け第12挿話の語り手は「犬」であるとの発犬(発見)は話題を呼んだ。ジョイスはけっして難解ではなく何回も読めば楽しくなる! きっとね。450円。

 

⑤ ジェイムズ・ジョイス『ダブリナーズ』柳瀬尚紀訳・新潮文庫ジョイス唯一の短篇連作集。かの翻訳不可能と言われた『フィネガンズ・ウェイク』の完訳を成し遂げ、惜しくも『ユリシーズ』は途中までの翻訳で鬼籍に入られた、まさに天才翻訳家の奇跡の名訳。旧新潮文庫版『ダブリン市民』の新訳版となる。360円。

 

⑥ ジェイムズ・ジョイス『若い芸術家の肖像』丸谷才一訳・新潮文庫ジェイムズ・ジョイス第一長篇小説。大作『ユリシーズ』の主人公の一人スティーヴン・ディーダラスを主人公に据えて、ジョイス自身の若き日も目に浮かぶ半自伝的小説。小説家にして、『ユリシーズ』鼎訳者の一人である丸谷才一の名訳。註解はなし。300円。

 

⑦ 結城英雄『ジョイスを読む』集英社新書集英社版『ユリシーズ』の鼎訳(丸谷・永松・高松)の解説者にして、サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞作『「ユリシーズ」の謎を歩く』(1999年・集英社)で名高いジョイス学者のジョイス入門書の決定版。一般向けの入門書はこれしかない。ジョイスの生涯、ジョイスの作品解説、そして、その文学的評価まで扱う。これさえ読めば、仮に『ユリシーズ』を読んでいなくても、今日から、あなたもにわかジョイシアン!500円。

 

ジェイムズ・ジョイス室内楽――ジョイス抒情詩集』出口泰生訳・白鳳社。ジョイス二冊の詩集『室内楽』、『ポームズ・ペニーチ』を合本、全詩を収録。原詩と訳詩を二分冊にて収録。一読すると、これがあの『ユリシーズ』の作者の手になる詩なのかと驚くであろう。平易にして過度にロマンティック。しかし、そこに20世紀を代表する小説家の秘密があるのかも知れない。経年劣化。中身は綺麗。3000円。

 

 

ジェイムズ・ジョイスユリシーズ全3巻・丸谷・永川・高松訳・集英社ジョイス第二長篇小説にして、20世紀を代表する長篇小説。アイルランドの古都ダブリンを舞台に1904年6月16日、たった一日の出来事を中年の広告取りブルーム、その妻モリー、そしてジョイス自身を思わせる文学徒スティーヴンを通して描く。定評ある丸谷・永川・高松訳で。詳細な注解付き。1600円×3冊。

ジェイムズ・ジョイス『ダブリンの人びと』米本義孝訳・ちくま文庫ジョイス唯一の短篇連作集。『言葉の芸術家ジェイムズ・ジョイス――『ダブリンの人びと』研究』(2003年・南雲堂)、『読解『ユリシーズ』』(上下・2004年・研究社)で高名なジョイス学者による翻訳。ビニルカヴァー貼り付け、謹呈箋も内側に貼り付け。中身は綺麗。720円。

 

シェイクスピアハムレット福田恆存訳・新潮文庫。イギリス文学、アイルランド文学を問わず、後世の文学、文化、様々な領域に強力な影響を与えたシェイクスピアハムレット』。T.S.エリオットはそこに「客観的相関物」が欠けているが故に失敗としたが、柄谷行人は、漱石を通してそこに内的「分裂」を見た。恐らくその意味でも『ユリシーズ』は積極的な意味で「分裂」しているのである。スティーヴンは「やつはシェイクスピアの亡霊がハムレットの祖父であるってのを代数で証明するのさ」と妄想しながら、生徒の補習をみる。定評ある福田恆存訳。経年劣化。130円。

 

 

ジェイムズ・ジョイス『ダブリン市民』安藤一郎訳・新潮文庫ジョイス唯一の短篇連作集。往年の読者はこの安藤一郎訳でまずジョイスの洗礼を受けた。新潮文庫は今柳瀬訳に改版されているので新刊では手に入らない。それにしてもこのリアリズムで書かれた瀟洒な短篇集から、誰が一体あの『ユリシーズ』を想像できたであろう。いや『ユリシーズ』を読むとよく、この『ダブリン市民』の情景が浮ぶのだ。520円。

 

 

ジェイムズ・ジョイスフィネガンズ・ウェイク全2巻・柳瀬尚紀訳・河出書房新社ジョイス第三長篇小説にして、他言語への翻訳は不可能と言われた言葉遊びと多層の意味に満ちた長篇小説。大工フィネガンは屋根から転げ落ちて死に、その通夜で生き返った……粗筋を書くのはほぼ不可能。ただ、この言語の渦に呑み込まれる外はない。柳瀬尚紀による瞠目の完訳。「ゆっくり読むという上等な読書の習慣さえあれば(……)」決して難解な本ではありません。」(大江健三郎)。若干カヴァー日焼け。2700円×2冊。

 

 

司馬遼太郎『愛蘭土紀行Ⅰ・街道をゆく30』朝日文庫。日本を代表する歴史小説家にして、独自の視点を持ちえた文明批評家の手になる高名な紀行文集の中の一冊。日本人に多大な影響を与えたという意味では思想家と言ってもよい。後半の3章分で自在にジョイスを論じている。「作家ジョイスは、アイルランドでこそうまれ得た。(……アイルランドにあるのは、無気力、空元気、天才的な幻想、雄弁。」カヴァー・中身とも綺麗。240円。

 

バーソロミュー・ギル『ジェイムズ・ジョイス殺人事件』岡真知子訳・角川文庫かのウンベルト・エーコ薔薇の名前』、ダン・ブラウンダヴィンチ・コード』も何のその、ジョイスユリシーズ』を題材とした文芸ミステリー。殺されたのはジョイス本人ではなくて、ジョイス学者。『ユリシーズ』の読解がヒントになる。舞台はもちろんダブリン。サスペンス・ドラマ並みに観光名所も。文学的にはどうか? 経年劣化。少々薄汚れ。470円。

 

以上で御座います。宜しくお願いします。

 

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