『鳥』第13号 「ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』100年」
はじめに
A ところで、今年2022年は何年かかご存知ですか?
B は? とつじょ、何、それ? 知る訳ないでしょ!
A ま、そーですか、そうでしょうね。実はわたしもつい最近まで知りませんでした。
B どういうこと?
A 実は、今年2022年は、アイルランド出身のジェイムズ・ジョイスの代表作である『ユリシーズ』が刊行されて丁度100年に当たるのです。
B は? 誰それ?
A ま、そんなとこかと思っていました。
B 馬鹿にしてんのか!?
A いやいや、かく言うわたしも、自慢じゃありませんが、まだ全部読んでません。
B ひどいな。
A 『ユリシーズ』が、かのマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』と並んで、20世紀を代表する長篇小説であるのは、知っていたのですが、なんかチャンスがなくて読んでなかったのです。
B フーン。
A そこで、これを機会にあちこちで読書会なども行われているようなのので、じゃあ読んでみようと思ったわけです。Bさんも一緒に読みませんか?
B 嫌です。
A あ、そう。
B で、どんな話なの?
A それはですね、アイルランドのダブリンという街の、1904年6月16日の朝っぱらから、夜中にかけての出来事なんかを主として3人の人物を中心に描いたものです。
B ふーん。それ、面白いの?
A うーん、普通に読むと、突然恋に落ちたり、殺人事件があったりとかの事件は全くなく、どちらかと言うと、登場人物たちの思ってること、思いついたことなんかが、だらだら書かれているだけですね。
B で、それ面白いの?
A そーねー、普通の意味で言うと、あんまりおもしろくないかも知れません。
B じゃあ、なんで読むの?
A そーねー、わたしは読書会に導かれて、そもそも長いので、本全体を読み切るということは、一旦おいて、普通の本で言うと、第〇章にあたる第〇挿話、まーだからエピソード1とか2とかなんだけど、それをまず、註とかを読まずに読みます。この段階で
は分かったような、分からんような感じです。
B ふーん。
A で、次に註を参考に気になったことをネットとかで調べます。で、そうこうしているうちに、なんで、ここはこういう言い方をしているのかなというようなことが、合っているかどうか分かりませんが、自分なりには分かった気になります。
B で?
A だから、ペイスメイカーとしての読書会なんかはとても有効ですね。わたしが今参加している、というか聴講している読書会をご紹介しておきます*[1]。是非試しにアクセスしてみてください。面白いよ。
B はー。
A で、もう一つは、フランス文学者の鹿島茂さんが、神保町に棚ごとにそれぞれ棚主がいて、選書をしている本屋を作りました。
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https://readyfor.jp/projects/passage
東京都千代田区神田神保町1-15-3サンサイド神保町ビル1F
せっかくなので、そこに「鳥の事務所」というそのままの店名で出店をして、ここしばらくはジョイスの伝道をしていこうと思ったのです。うちは「アンドレ・マルロー広場の11番地」で、入り口入ってすぐ左の棚の下の方です。
B うーん、それは余程のことだね。大丈夫か? もう、病の域にいっちゃったかもよ。
A まー、飽きっぽいので、どこまで続くか分かりません。飽きるまでということで。
B なんじゃそりゃ!?
(初出『鳥――批評と創造の試み』第13号・2022年3月16日・鳥の事務所)
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*[1] ① 「22Ulyssesージェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』への招待」全22回開催・2022年2月2日から12月16日までon lineにて実施・発起人:田多良俊樹、河原真也、桃尾美佳、小野瀬宗一郎、南谷奉良、小林広直、田中恵理、平繁佳織、永嶋友、今関裕太、宮原駿、湯田かよこ、新井智也。②「2022年の『ユリシーズ』―スティーヴンズの読書会」全18回(?)開催・2019年6月16日から・現在はon lineにて実施・主催者: 南谷奉良・小林広直・平繁佳織。