鳥  批評と創造の試み

主として現代日本の文学と思想について呟きます。

一貫した端正な絵柄    荒木飛呂彦『魔少年ビーティー』

荒木飛呂彦を読む/観る

一貫した端正な絵柄

荒木飛呂彦魔少年ビーティー



荒木飛呂彦魔少年ビーティー1984年10月・ジャンプ・コミックス(集英社)/2000年6月21日・集英社文庫(コミック版)。

■短篇連作漫画。

■全6話、あとがき。213ページ。

■495円(税抜き)。

■2023年6月4日読了。

■採点 ★★☆☆☆。

 

 本作は、かの『ジョジョの奇妙な冒険』で高名な漫画家・荒木飛呂彦の記念すべき雑誌初連載作品で、事実上のデビュー作と考えてもよいだろう。

この漫画が連載されていた1983年当時、少年漫画誌を購読する習慣はおろか漫画を読んでいる余裕など、わたしにはまるでなかった。が、何故か、この『魔少年ビーティー』という奇妙な題名と奇天烈な絵柄は記憶に残っていて、どういう訳か、その次回作『バオー来訪者』も題名だけ覚えていた。さらにその次の作品『ジョジョの奇妙な冒険』も、今に至るまで全く読んではいないが、何故か、荒木飛呂彦という名前と共に、世評の高まりとは別に、これらの漫画の異様な世界を記憶に留めていた。

偶々、先日訪れたODWのMJJ書店で買い求めた中にこの作品があり、更に偶々、『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品である『岸辺露伴は動かない』のテレ‐ヴィジョン・ドラマを偶々観て、興味を惹かれ、手に取った次第である。

主人公のキャラクターや行動様式にはいささかのブレがあり[1]、それに伴いドラマの内容や展開もいささか散漫な印象は残るが、主人公・ビーティーの端正な絵柄は一貫している。強いて言えば、美点はそれだけで、そもそもこの少年の目的は何か、祖母は何者か、など様々な設定上の謎が残る。

逆に言えば、当時の『少年ジャンプ』編集部は6回とは言え、よくもまあ、連載させたものだと感心する。

惜しむらくは、第3話「イタズラ死体事件の巻」のような学園ドラマの枠を借りた上で、そこに腹話術の人形を手にしたビーティーが奇妙なトリックの世界を展開するというのを維持するとよかったのかも知れぬが、とにかく、当時は連載を打ち切られぬように、何でもやってみた、という感じだったのであろう。

駒割りも、例えば93ペイジのロープが縦にピンと張る縦に一駒など、後年の独自な展開を予兆するものもあり興味深い。

それにしても主人公の名前「ビーティー」(B.T.)はイニシャルで本名は言えないとされているが(p.9)、少年漫画で、主人公の名前がイニシャルなんてことがあっただろうか? まあ、とにかく奇妙だ。

 

 

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1,148字(3枚) 20230604 2027

 

[1] 英語タイトルはCOOL SHOCK B.T. となっていて、いささかならず首を傾げざるを得ないが、確かに主人公ビーティーはクールである。その彼が第二話では美少女(でもないが)に横恋慕したり、恐竜の化石を強奪しようとしたりする。